愛を紡ぐ 


シモン・ベルモンドが宿敵ドラキュラを打ち倒してから数十年が経った。
ドラキュラ復活の兆しも無く、ベルモンド一族は穏やかな日々を過ごしていた。
そんなある日、彼等が所有する広大な庭に、何やら賑やかな声が響いていた。
「ジュスト!まだ魔法の勉強が終わっていないだろう。またさぼっているのか?」
老いてなお、若き日の精悍さを失わないシモンの叱咤が飛んだ。
幼い少年――孫のジュストの素行について、何やら説教をしているようだ。
「シモンじいちゃん、これは『いきぬき』だよ!さぼってなんかないってば!」
「こら、言い訳するな。全く、一体何処でそんな屁理屈を覚えてくるんだ…。」
ジュストは祖父であるシモンの剣幕にも動じず、ぷうっと頬を膨らませている。



そんな二人の間に、上品な老婦人――シモンの妻であるセレナが割って入った。
「ちゃんとお勉強ができたら、後で美味しいケーキを焼いてあげるわ。だから、ね?」
セレナはジュストの目線に合わせてやり、優しく微笑みながら言った。
「セレナばあちゃん、ホント!?じゃあ、おれがんばる!」
目を輝かせたジュストは、高らかな声をあげて屋敷の方に走って行った。
「セレナ…あまり甘やかしてばかりではよくないぞ」
シモンはむうと唸りながら、傍らの妻にそう告げた。
しかし、セレナは彼のそんな言葉も気にせず、こう返した。


「そんな事ないわ。戦いの事ばかり考えていては駄目よ。今はこの平和を謳歌しましょう」
じっとシモンを見上げるその顔は、昔と少しも変わらぬ、凛とした美しさに満ちていた。
そんな妻の様子に、シモンは張り詰めていた表情を緩めた。
「そうだな…もうジュストにまでに鞭を取らせる事はしたくないからな」
「あの子ならきっと大丈夫よ。だって、私達の孫ですもの!」
老夫婦はどちらからともなく、そっと寄り添った。
若き頃から紡がれたこの愛もまた、これから先、ずっと続いてゆくのだろう。




作者 深雪さん

文章にて失礼いたします、深雪(みゆき)と申します。
今回、悪魔城男女カプ祭りという素敵な企画に参加する事が出来て、とても嬉しいです。
シモン×セレナ、そして孫のジュストを登場させたお話です。
拙いながらも想像を膨らませ、楽しみながら書く事が出来ました。
貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました!

戻る